肺癌などの早期発見など
診療内容と方針
三重中央医療センター呼吸器外科は1998年病院開設時に発足以来20年以上三重県中部地区の診療にあたり累計3000例の手術を行っています. 2024年現在は呼吸器外科専門医2名が常勤医として診療にあたっています.
当院は厚労省認定がん診療連携準拠点病院となっており, 原発性肺癌以外にも他診療科の転移性肺癌をはじめとする腫瘍性疾患を主に診療しています. それ以外にも縦隔腫瘍、気胸、膿胸などの感染症や胸腔の対する臓器を診療対象としています. 胸腔ならびに縦隔と言う耳慣れない言葉がでてきましたが胸腔とは左右の肺が入っている場所で縦隔は左右の胸腔に挟まれた場所と理解してください。呼吸器外科で扱う臓器は“呼吸器”の名前の通り左右の肺がありますが、それ以外にも縦隔にある胸腺や縦隔に発生した腫瘍に対しても治療を行っています.
当院は胸壁への浸潤や気管支形成を要する癌などを除き胸腔鏡手術を積極的に行っています. 定型的な肺切除術ならびに区域切除術は単孔式胸腔鏡手術を標準術式としています. これは3~4cmの小さな傷一ヶ所(単孔)から肺切除やリンパ節郭清を行うという方法です(図1)
当院の胸腔鏡は直径5㎜と非常に細いカメラですが得た像を調整し高詳細な像がディスプレイに描出されます. また, 手術の前には各々の患者様毎に造影剤を用いたCTを撮影し胸腔内を走る肺の動脈、静脈、気管支を3次元構築し術前~術中に確認してオーダーメイドの手術を行っています(図2).
内視鏡手術の利点は詳細な手術画像を複数の呼吸器外科専門医が確認しながら手術を施行することができるためきめ細かい操作ができ結果的に出血が少ない手術を行うことができます. 更に2019年からは蛍光内視鏡システムを導入し肺を単純に切除することはせず早期の患者様には必要な範囲だけを切除する区域切除術と言う縮小手術を行い良好な手術成績を得ています.これにより正確に切離すべきラインで肺を切除することが可能となりました(図3).
特に主となる1期の肺癌の手術成績をOS(overall survival=生存率)ならびにRFS(relapse-free survival, 無再発生存期間)で示しますが, 良好な成績となっています.(図4, 図5)
ところで本邦では各々の領域毎に鏡視下手術の技術認定制度が存在していることをご存じでしょうか. 呼吸器外科領域においても2021年度から開始しています. 結果は呼吸器外科専門医の更新歴がある医師が審査対象となり合格率は70.1%と決して易しい試験ではありませんでした.当院スタッフは胸腔鏡安全技術認定制度に合格しており高い水準での胸腔鏡手術が施行されていることが証明されました.
しかし胸腔鏡手術も万能ではありません。肺の動脈ならびに静脈は多量の血液が流れているため一度損傷した場合は制御困難となり得る可能性があります. 永年の喫煙習慣により肺動脈にリンパ節が浸潤しているような場合は開胸し血管形成が必要となってくる場合もあります. 我々は長い経験から胸腔鏡手術の利点だけでなく、欠点や限界も熟知しているため安全性や治療意義を優先し行っているため必要に応じて開胸手術に移行する可能性があります.
・嚢胞性疾患
自然気胸完全鏡視下に肺部分切除術(ブラ、ブレブ切除)を基本にしています。原発性気胸(若年性気胸など)に対しては完全鏡視下に肺部分切除術を行い, 再発防止目的にPGAシートや酸化セルロース等による補強を標準的に施行しています.術後約3日間で退院可能です. 続発性気胸(肺気腫に起因する気胸など)に対しては、完全鏡視下に肺部分切除術を基本としていますが, 症例に応じて(癒着高度例など)小開胸を加え行っています.
難治性気胸(高齢者、全身状態不良例などで手術が困難な場合)に対しては, 気管支充填術(EWS)や胸膜癒着術を行い治療しています.
胸骨正中切開(胸骨を縦に切開し胸を開く)で腫瘍を摘出します.
腫瘍が小さい場合や, 縦隔の左右どちらかに偏在している場合は, 胸骨の下端を3㎝程度の切開と必要に応じて2-3個の補助の孔を左右の胸にあけて縦隔の腫瘍を切除することを行っています
呼吸器内科、放射線科とカンファレンスを行い、手術が可能な症例に関しては胸膜肺全摘術を行っています.
・感染症(膿胸、結核など)難治性(内服治療に抵抗性)の結核や非結核性抗酸菌症, 肺真菌症に対し, 切除術(肺葉切除術など)を施行しています. 内科治療(胸腔ドレナージ, 胸腔洗浄など)に抵抗性の膿胸に対しては開窓術, 胸郭成形術を行っています.
・びまん性肺疾患(間質性肺炎など)呼吸器内科と相談し確定診断および治療方針決定目的に胸腔鏡下による肺生検を行っています.
最後に
我々は、地元地域の医院、病院の先生方との連携を重視し、日々の診療に取り組んで参りました. 確実な診断に基づいた最も標準的な患者様およびそのご家族が納得しうる治療をおこなうよう努めています. そのため日進月歩の医療業界において最新の治療を取り入れながら地域の皆様に信頼される呼吸器外科であるよう精進していきたいと思います. これからもよろしくお願いします.
氏名 | 安達勝利 |
統括診療部長 |
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卒年度 | 平成元年 |
認定等 | 日本呼吸器外科学会専門医 |
氏名 | 渡邉文亮 |
呼吸器外科医長 | |
卒年度 | 平成9年 |
認定等 | 日本呼吸器外科学会専門医 胸腔鏡安全技術認定医 日本外科学会指導医 日本外科学会専門医 日本呼吸器内視鏡学会指導医 日本呼吸器内視鏡学会専門医 日本癌治療学会認定医 肺がんCT検診認定医 |
氏名 | 川口瑛久 |
呼吸器外科医師 | |
卒年度 | 平成29年 |
認定等 | 日本外科学会専門医 呼吸器外科若手医師の会 NEXT(Network of Exploration for Thoracic Surgeon) 中部支部副代表 |
診療実績
原発性肺癌(2014年~2018年)
外来受診についてのお問い合せ先
担当 医事課
TEL:059-259-1211(代表) FAX:059-256-2651